慢性疲労症候群


(症状のチェックと原因、治療についての解説)

1.はじめに

最近、慢性疲労症候群という病名を見聞きすることが多くなりましたので、すでにご存知の方もいると思います。

慢性疲労症候群は原因の分からない倦怠感などが、半年以上続く病気だと言われています。

英語では「Chronic Fatigue Syndrome」と書くところから「CFS」と呼ばれることも多いようです。

しかし、病院で慢性疲労症候群とかCFSと診断された人の中には、普通神経症が原因になっている人も多いと思います。

このページでは今は原因不明とされている慢性疲労症候群について、森田療法の立場から考察しておりますので、今、実際に悩んでいる方は治療のための1つのヒントにして頂ければと思っています。


2.慢性疲労症候群とは

今、上にも書かせて頂きましたが、極度の倦怠感や、やる気のなさといった症状が、半年以上続くのが慢性疲労症候群の特徴だと言われています。

倦怠感、やる気のなさといった症状は、誰でも、たまには感じるものですが、毎日、これらが気になってしまい、日常生活を送る上で支障が出てきている状態が慢性疲労症候群になると言っても良いと思います。

今は慢性疲労症候群の原因は不明だとされていますが、この症状は神経質性格の傾向のある人が、何らかの病気をしたことが「キッカケ」になって起こってくることも多いものです。

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ある人の場合、それまで特に疲労感や倦怠感を気にすることがなかったのですが、交通事故で頭に怪我をして半年程入院することになりました。

そして、半年後に怪我は治り、退院したのですが、この後、半年くらいしてから、少し動くと疲れを感じ、どこかに病気があるのではないかと思い、他の病院で診てもらうことが多くなりました。

しかし、何カ所か病院に行き診てもらっても、検査の結果、特に異常はないということで原因が分かりませんでした。

しかし、疲労感や倦怠感は消えることが無く、何とか仕事には行っていましたが、毎日慢性的な鬱陶しさを感じ辛い状態で過ごすことになってしまったのです。

そして、困り果てた末に、精神科で専門医に診てもらったところ、「うつ病」だと診断され、抗うつ剤や抗不安薬などの薬を処方されました。

しかし、いくら薬を飲んでも、慢性的な疲労や倦怠感は、相変わらず気になる状態が続いていました。

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この例のように、慢性疲労症候群の代表的な症状である、倦怠感や、やる気のなさは、「うつ病」の症状と、ほとんど区別がつかないものなのです。

このため、精神科や心療内科の専門医でも、この症状を「うつ病」として扱っていることが多いのではないかと思います。

しかし、神経質性格を持っている人で、慢性的な倦怠感や、やる気のなさといった慢性疲労症候群の症状のある場合は、自律神経失調症、つまり普通神経症が原因になっていることが多いと思います。

そして、この場合は、抗うつ剤などの薬を飲むよりも、森田療法などの精神療法で対応していった方が根本的な解決に結びつく可能性が高いと思います。

なお、神経質性格の特徴を持っていて、毎日疲労感や倦怠感を感じるために栄養ドリンクやサプリメントをよく飲む人の中にも、この症状の人が多いのではないかと思います。


3.症状チェックのための具体例

下記の症状をチェックしていただくと慢性疲労症候群と言われている症状の診断が出来ると思います。


<「慢性疲労症候群」の診断基準>

01.平熱より0.5〜1.5℃程度高い微熱が半年以上続いている。

02.慢性的な頭痛や頭重感がある。

03.運動をした後のような筋肉痛や関節痛が続いている。

04.風邪を引いた時のような、のどの痛みがある。

05.喉や首のあたりのリンパ節の腫れや痛みがある。

06.まぶしさや目がくらむ感じがする。

07.原因がハッキリしない疲れが続いている。

08.良く寝ても疲れが取れない。

09.ちょっと動くだけでも疲れてしまう。

10.寝付きの悪さなどで、よく眠れない。

11.日中、極度の眠気に襲われる。

12.思考力や集中力の低下を感じる。

13.意欲がわかず、やる気が起きない。

14.ボーっとしてしまうことがある。

15.落ち込んだり憂うつになりやすい。



上記の診断基準の他にも日本疲労学会診断指針(2007)や、アメリカCDC診断基準(fukuda)(1994)などがあります。

ただ、これらの診断基準に書かれている症状は、先ほども書きましたが、自律神経失調症など、普通神経症の場合にも見られるものなのです。

ですから、心配性や自己内省性の強さ、負けず嫌い、観念的といった神経質性格の特徴を持っている人の場合は、普通神経症から来ていると考えて良いと思います。


4.原因

慢性疲労症候群の原因は今は不明だとされています。

つまり、原因不明の倦怠感などの症状で、血液とか心電図などの検査を受けても他の病気が見つからず、精神疾患も当たらない場合に慢性疲労症候群という病名が付けられているのが現状なのです。

しかし、今、上でも書きましたが、神経質性格の特徴を持っている場合は普通神経症が原因だと考えて良いと思います。

つまり、倦怠感や体調の悪さに対する「とらわれ」が原因になっていると言えるのです。

ですから、病院で慢性疲労症候群という診断をされたとしても、神経質性格の特徴を持っている場合は原因が明らかですから、適切な治療も可能だと考えて良いと思います。

原因が分からない場合は、それぞれの症状毎に対処療法的に対応していくしかないのですが、根本となる原因が分かっていれば、根本的な治療が可能になるものなのです。


5.誤った方向の治療

今は、慢性疲労症候群というと原因不明とされていますから、上にも書きましたが、現れる症状毎に対処療法的に薬を処方しているのが現状だと思います。

具体的には身体の免疫力を高める目的で「捕中益気湯」などの漢方薬を用いたり、活性酸素による体内細胞の障害を防ぐため、抗酸化作用をもつビタミンCを大量に用いることがあるようです。

また、抗ウイルス薬や免疫調整剤、抗うつ剤、精神安定剤などが使われることもあるようです。

しかし、普通神経症から来る慢性疲労症候群の場合は、体調の悪さに対する「とらわれ」が原因ですから、痛み止めなどの薬を飲んでしまうと、逆に、余計に「とらわれ」を強くしてしまうものなのです。

つまり、同じ慢性疲労症候群と診断されても、神経質性格の特徴を持っている人の場合は、一般的に行なわれている薬による治療では、逆に余計に症状を強くしてしまうことが多いものなのです。

しかし、今は、こういう誤った方向の治療をされている人が増えているように思います。


6.薬に頼らない治療

さきほども書きましたが、慢性疲労症候群と診断されても、神経質性格の特徴を持っている人の場合は体調の悪さに対する「とらわれ」が原因となっているものなのです。

そして、この場合は疲労感や体調の悪さを感じながらも、薬などに頼らず、 森田療法の考えを参考にしながら目の前の「なすべきこと」を1つ1つ、きちんとこなすようにしていった方が良いと言えるのです。

これが目的本位の行動ということになるのですが、こういう目的本位の行動の積み重ねの中で、少しずつ疲労感や体調の悪さに対する「とらわれ」が薄れてくるものなのです。

そして、この結果として、倦怠感や体調の悪さなどの慢性疲労症候群の症状を感じることがなくなってくるものなのです。

ですから、これが薬に頼らない最も良い治療法になると言って良いと思います。

※なお、慢性疲労症候群のさらに詳しい治療方法については、公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団のHPで医療機関の医師などの解説が載っています。



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