本態性振戦



(病院の薬によらない治療についての説明)

1.はじめに


本態性振戦は手や足の振るえが起こる症状であり、40歳以上で16人に1人、65歳以上で5人に1人に起こると言われているくらい、悩んでいる人が多いものです。

なお、振るえ以外には、これといった症状がないのが本態性振戦の特徴だと言われています。

パーキンソン病や精神科の薬(抗うつ薬など)の副作用から起こるドーパミンという脳内の神経伝達物質の異常が1つの原因だと言われていますが、これ以外は原因不明だとされています。

しかし、この原因不明の本態性振戦の中には神経症の症状の一種である書痙(しょけい)から来ているものが、かなりあると思います。

このページでは、この神経症の症状の一種である書痙をベースにして手や足の振るえについて説明させて頂きます。


2.本態性振戦とは

本態性振戦は人前で文字を書く時などに手が振るえてしまい、恥ずかしい思いをするという症状のことを言い、書痙から来ている場合も多いと考えられます。

結婚式や葬儀の記帳や、旅館やホテルに泊まる時のサインなどで、この手の振るえの症状に悩んでいる人も案外多いと思います。

このような書痙から来ている本態性振戦の場合、対人恐怖症の症状に入るものなのですが、私の経験から言うとバリバリと仕事をこなしているような、やり手の働き盛りの人に多いように感じます。

また、この症状に悩む人は同じ対人恐怖症でも人間関係における不安や緊張は、それほど感じていない人が多いように思います。

むしろ、人前で話したり、スピーチするのが得意な人の方が多いくらいだと思います。

このように人間関係や人付き合いに関しては特に問題はなく、文字を書いたりする時だけに手の振るえの症状を感じる人が多いように感じます。

こういう意味で、一応、対人恐怖症に含まれる症状だと言えますが、本態性振戦の場合は普通神経症の症状に近いものだと言えるのではないかと思います。


3.具体的な症状の例

本態性振戦と一口に言っても、実際には、いろいろな変形された形で現れてくるものです。
一例を挙げますと下記のような状態が、この症状に含まれると思います。

・結婚式や葬儀の受付で、自分の名前を書く時、手の振るえで思うように字が書けない。

・会社などでお客様にお茶を出す時に、茶碗やコップを持つ手が振るえてしまう。(若い女性の方によく見られます。)

・学校などの授業で、みんなの前で発表しなければならない時に、声や手が振るえてしまう。

・手の振るえのために、食事が作れない。(主婦の方によく見られます。)

・人と話している時、声が振るえ、出にくくなる。

・声や手が振るえてしまうために、電話に出るのが怖くなってしまう。

・大勢の人前で話をする時に、手や足が振るえてしまう。

・顔がピクピクと動いてしまう。

・宴会などの席上で、お酒をついでもらう時に手が振るえてしまう。

上に挙げたような本態性振戦の悩みを持つ人が、このところ急に増えているように感じます。

字を書く時の手の振るえという症状は昔から見られたものですが、最近、パソコンやスマホなどの普及で、字を書く機会が減ってきているということも、いくらかは影響しているように思います。



4.原因

はじめにも書きましたが、本態性振戦の原因はパーキンソン病や精神科の薬(抗うつ薬など)の副作用から起こるドーパミンという脳内の神経伝達物質の分泌量の異常以外には分かっていないと言われています。

ストレス、疲労、カフェインの摂取などが通常の生理的振戦を悪化させる要因であるところから、これらも原因になっているのではないかと言われています。

しかし、森田療法においては、以前から書痙と言われている症状があり、このために本態性振戦の症状が起こっていることも多いものなのです。

しかし、残念なことに、今の関連する医学会においては書痙のことが、ほとんど触れられていないのが残念だと思います。

また、このために、病院で薬や手術といった誤った方向の治療をされていることも多いように思います。


5.誤った方向の治療

上に書かせて頂いたような振るえの症状に悩んでいる人は、自分の症状が本態性振戦であるということに気づかず、どうして良いのかが分からず、一人で悩みを抱え込んでいることが多いものです。

中には、神経内科などの病院で診てもらって、手の神経の異常だということで手術をされてしまうという人もいるようです。

また、最近、パーキンソン病という病気が広く知られるようになり、この病気の場合も手や足の振るえが起こるところから、内科の病院の先生からパーキンソン病だと言われ、薬を飲んでいる人もいるようです。

そして、この薬の副作用で、体の動きが悪くなったり、体が傾いたりするという別の症状が新たに起こっている人も多いように思います。

つまり、書痙という神経症から起こっている本態性振戦の場合は、本来、体の異常から来る病気ではないのです。

しかし、こういう場合にも漢方やアルマール、アロチノロールといった薬を飲むことで、薬の副作用から新たな症状を作り出しているということも多いように思います。

そして、こうなると、ますます神経症かどうかの見分けが付きにくくなってしまうものなのです。

また、本態性振戦に似た症状に、顔の引きつりや、笑った時の顔が泣きべそをかいているように感じる表情恐怖というものがありますが、病院で診てもらったところ、顔面神経麻痺といった診断をされ、全く効果のない治療をされてしまう人も多いようです。

ですから、病院で、このような誤った方向の治療をされないように自分自身でも色々調べてみることが大切だと思います。

最近はインターネット上の情報も充実してきていますので、色々なサイトを見てみるのも良いのではないかと思います。


6.病院の薬によらない治療

純粋なパーキンソン病から起こっている本態性振戦の場合には病院の薬をきちんと飲み、治療していくことが大切だと思います。

また、精神科の薬(抗うつ薬など)の副作用から起こる本態性振戦の場合には、量や種類の調整をしていくことが大切になってくると思います。

しかし、書痙という神経症から起こっている本態性振戦の場合は、漢方やアルマール、アロチノロールといった病院の薬に頼らず、森田療法の学習を通して治療していった方が根本的に治る、つまり完治の可能性が高くなると思います。

人前でサインをする時に、また前のように手が振えてしまったらどうしようと予期不安を感じるのが書痙という神経症から起こっている本態性振戦の場合の特徴なのです。

そして、こういう予期不安を感じながらも、必要な場合にはサインすることから逃げないようにしていくことが大切になってくるのです。

これが森田療法で言っている目的本位の行動ということになるのです。

そして、森田療法の考え方を参考にしながら、こういう目的本位の行動を積み重ねていくと、この結果として、書痙という神経症から起こっている本態性振戦の完治に結びつくものなのです。

※なお、書痙に関連する情報については、公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団のHPで医療機関の医師などの解説が載っています。



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