人見知り



(原因と克服方法についての説明)

1.はじめに

人見知りというと、赤ちゃんや幼児、小さな子供が、知らない人を見て、恥ずかしがったり嫌ったりすることだと言われていました。

しかし、最近は、口下手で大人しく、恥ずかしがり屋な大人の場合にも使われるようになってきました。

また、対人恐怖症の傾向が強く人付き合いがスムーズにいかないような人の場合にも人見知りという言葉が使われるようになってきたように思います。

このページでは、こういう大人の場合の人見知りについて説明させて頂きます。

ですから、自分自身で人見知りではないかと悩んでいる人は、このページの内容を参考にして克服のためのヒントにして頂ければと思っています。


2.人見知りとは(意味)

人見知りと言われる状態は、先ほども書きましたが、赤ちゃんや幼児、小さな子供の頃に良く見られますが、これが大人になっても治らず、ますます強くなり常に気になってしまうという状態になっている人も多いものなのです。

そして、こういう状態になっている場合は、対人恐怖症など神経症に含まれる人見知りだと言って良いと思います。

今の日本は少子化による核家族化、都市部における隣人との人間関係の希薄さなどから大人になっても人見知りが直らない人が多いのだと思います。

ただ、ラブシャイ (Love-shyness)とか回避性パーソナリティ障害(英語名:Avoidant Personality Disorder)という言葉もある位で、人見知りというのは日本に限ったことではなく、アメリカやヨーロッパなどの先進国でも見られるようです。

人見知りは、あがり症や恥ずかしがり屋などと同じ意味で使われることも多いですが、人前で緊張し思うように話せなくなってしまうとか、顔が赤くなってしまう、汗をかいてしまう、という形で現れてくることが多く、森田療法では対人恐怖症などの強迫神経症に含まれる症状になります。

そして、これは特に日本人に多く見られる症状だと言われています。

神経症の中でも、最も多く見られるのが、人見知りやあがり症だと言って良いと思います。

なお、この症状は対人恐怖症に悩んでいる時に共通して見られる症状だと考えて良いと思います。

人に気兼ねをするとか、人に気を使うということは、誰にでも多かれ少なかれあるものであり、むしろ、社会生活を送っていく上では大切なことになりますが、これが過度に強くなり、ここに、とらわれるようになってしまうと社会生活を送っていく上で支障が出てくるものなのです。

なお、ビートたけしや、松本人志、志村けん、オードリー若林、有吉弘行といったタレントやお笑い芸人の中にも、人見知りを公言している人は多いようです。


3.診断のための具体的な例

神経症レベルの人見知りかどうかは下記の具体例に当てはまるかどうかで診断できると思います。

1.話したいと思っている相手になかなか話しかけられない。

2.先生や上司など目上の人の前に行くと緊張し話せなくなってしまう。

3.好きな異性がいても、自分から近づけず、避けてしまう。

4.苦手なタイプの人だと無意識のうちに目をそらしてしまう。

5.社交辞令がうまく言えない。

6.たまにしか会わない親戚などの前で無口になってしまう。

7.親に対しても心の内を話せない。

8.仕事の話は出来るが、雑談になってしまうと言葉が出なくなる。

9.新しい環境に、なかなか馴染めない。

10.必要以上に気兼ねや遠慮をしてしまう。

11.男性の場合、女性と気軽に話せない。

12.笑われたらどうしようと感じ、思った事が言えない。

13.バイト先の人たちと、なかなか仲良くなれない。

14.口下手なことに劣等感を感じている。

15.外では大人しいが家では内弁慶である。

16.他人から大人しいと言われる事が多い。



4.原因

人見知りは赤ちゃんにも見られますから遺伝的な原因が大きいと思います。

しかし、幼児や子供時代を過ぎて大人になっても人見知りが続く場合は、遺伝的な原因と共に考え方や行動の仕方といった後天的な要素が影響してくると思います。

これは神経症が起こる原因と同じだと言って良いのではないかと思います。

神経症の場合は神経質性格や育った環境といった「外的要因」と誤った認識や行動の仕方といった「内的要因」が重なって起こると言われています。

しかし、これは対人恐怖症の傾向の強い人見知りの場合にも同じように言えるのではないかと思います。

つまり、人前での緊張や不安に引きずられて学校や会社における社会的な交流を避けてしまうことで、ますます、人見知りの状態を強くしてしまうのだと思います。

ただ、発達障害から起こる人見知りの場合は先天的な原因の方が大きいと思います。


5.人見知りを直す誤った方法

対人恐怖症レベルの人見知りに悩んでいる人は、かつての私もそうでしたが、人前での緊張や不安をなくそうと考え、交際術や心理学関係の本を読んだりするものです。

そして、中には、人見知りを直すために民間療法を試みたり、宗教的な修行に救いを求めたりする人も多いように思います。

しかし、こういう行動は森田療法では症状だけに目を向け、これを無くそうとする気分本位の、はからいの行動ということになってしまうのです。

ですから、こういう行動を取ってしまうと、一時的には楽が出来るのですが、長期的には症状は回復するどころか逆に強くなってしまうものなのです。

また、今は人見知りの悩みのために心療内科などの病院に行くと、発達障害や社会恐怖、回避性パーソナリティ障害、場面緘黙症などと言った診断をされ薬物療法で治療されることが多いのではないかと思います。

しかし、これも対人恐怖症の傾向の強い場合には気分本位の行動ということになってしまいますので、人見知りを直す誤った方法ということになってしまうと思います。


6.克服方法

人見知りの場合も他の対人恐怖症の場合と同様に症状だけに目を向け、これを治す方向ではなく森田療法で言っている目的本位の行動を取るようにしていくことが大切になってくると思います。

つまり、森田療法の考え方に沿って行動の仕方を変えるようにしていくと、少しずつ、良い方向に向いてくるものなのです。

目的本位というのは森田療法で用いられている考え方ですが、これは人前での緊張や恥ずかしさを感じながらも、これに引きずられて人を避けないようにしていくということなのです。

人前での緊張や恥ずかしさに引きずられ、人から逃げてしまうと、一時的には楽が出来るのですが、長期的には、ますます人見知りの症状を強くすることになってしまうのです。

ですから、緊張や恥ずかしさといった症状を感じながらも、目の前の人から逃げず、きちんと、その時の目的をこなすようにしていくことが大切になるのです。

これが目的本位の行動ということになるのですが、森田療法の考え方を参考にしながら目的本位に行動していくと、精神安定剤などの薬を飲まなくても、少しずつ症状を克服していけるものなのです。

ですから、これが症状改善のために一番良い方法であり、また、克服方法になると思います。

※なお、人見知りに関連する情報については、公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団のHPで医療機関の医師などの解説が載っています。



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