パニック発作

(診断基準と薬を用いない対応についての解説)

1.はじめに

パニック発作という言葉を聞いた事のある人は少ないと思いますが、これは不安神経症の代表的な症状になるものなのです。

快速や急行など駅に停まる間隔の長い電車に乗っているような時に突然、心臓がドキドキしたりバクバクする動悸が起こり、このまま倒れたり死んでしまうのではないかと不安になるのがパニック発作の典型的な現れ方になります。

歌手の円広志さんや、元プロ野球選手の長嶋一茂さんなど、歌手やスポーツ選手の中にもパニック発作で悩んだことのある人が多いので、対人恐怖症などに比べると一般的な悩みになっているのではないかと思います。

今、実際に動悸や過呼吸などのパニック発作に悩んでいる人が、具体的にどうしたら良いのかというヒントにして頂ければと思い、このページを作成致しました。


2.パニック発作の診断基準

乗物恐怖や過換気症候群といった不安神経症の症状のベースになっているのが、このパニック発作だと言っても良いと思います。

アメリカの精神医学会の診断基準(DSM-W)の中では下記のように定義されています。

なお、これは前提として、心電図や脳波などの検査で異常がない場合の話になります。

<「パニック発作」の診断基準>

下記の症状の4つ以上が同時に起こり、このまま死んでしまうのではないかと、強い死の恐怖や不快感を覚える場合。
(一般的には10分以内に症状が治まってくる。)

01.動悸や心拍数の増加が起こる。
02.冷や汗が出る。
03.手足や体が震える。
04.呼吸が早くなったり(過呼吸)息苦しさを感じる。
05.息がつまるような感覚を覚える。
06.胸の痛みや不快感を感じる。
07.吐き気や腹部の不快感を感じる。
08.めまいやふらつき、気が遠くなる感じがする。
09.非現実感や自分が自分でない感じがする。
10.気が変になるのではないかと不安になる。
11.このまま死んでしまうのではないかと恐怖を感じる。
12.皮膚のしびれや、うずく感じがある。
13.寒気やほてりを感じる。

パニック発作は厳密には上に紹介させて頂いた診断基準に該当する症状になりますが、一言で言えば、動悸や息苦しさのために、このまま死んでしまうのではないかと「死の恐怖」を感じる症状だと考えて良いと思います。


3.パニック発作の具体例

参考までに実際にどういう形で起こるかを紹介させて頂きます。


(パニック発作の具体的な例)

1.電車に乗っている時に突然、心臓がバクバクし不安になる。

2.夜中、睡眠時にベッドの中などで突然息苦しさを感じる。

3.満員のバスの中で冷や汗と共に吐き気を感じがする。

4.動悸の不安のために飛行機に乗ることが出来ない。

5.高速道路で渋滞中の車の中で動悸が起こり不安になる。

6.デパートのバーゲン会場の人込みの中で目眩がする。

7.安売りの日のスーパー店内で息苦しさを感じた。

8.コンサート会場で震えや気の遠くなる感じがした。

9.病院の待合室で待っている時に冷や汗やふらつきを感じた。

10.美容院で髪をカットしてもらっている時に息苦しさを感じた。

11.エレベーターに乗っている時に心臓がドキドキし不安になった。

12.家で留守番をしている時に胸の痛みを感じ、不安になった。

13.注射の前に血圧が下がったようになり冷や汗が出る。

14.誰もいない所で仕事をしている時に、突然、不安になる。



これらの例に思い当たるところのある人はパニック発作の可能性があると言って良いと思います。


4.原因

今の医学界ではパニック発作の原因は不明だとされています。

そして、下記のような仮説があるようです。

1.脳の病気や心の病などではなく「思い込み」や「思い違い」が原因である。

2.セロトニンなどの脳の神経細胞間の情報を伝える化学物質(神経伝達物質)や、それを受けとめる受容体(レセプター)の機能の異常が原因である。

3.脳の窒息を防ぐ警報が誤って出るため炭酸ガスが原因である。

4.イソプロテノール(喘息薬)やエストロゲン(ピル)、カフェイン、コカインなどの物質が原因である。

しかし、森田療法においてはパニック発作は不安神経症の症状であり、「死の恐怖」に対する「とらわれ」が原因だと考えています。

つまり、脳の病気や心の病、神経伝達物質、化学物質などが原因ではなく、また、単なる「思い込み」や「思い違い」でもないということなのです。

たまたま、通勤電車の中で心臓のドキドキを感じ、このまま死ぬのではないかとパニックになったことが「キッカケ」になり起こってくるものなのです。

そして、また、あの時のようになったらどうしようという予期不安に引きずられて、電車に乗ることを避けてしまうという気分本位の行動を繰り返すことで「とらわれ」が出来てしまうものなのです。

そして、この結果、パニック発作の症状が、ますます強くなってしまうということなのです。


5.誤った方向の対応

今はパニック発作の症状のために心療内科などの病院に行くと、SSRIや三環系、スルピリドなどの抗うつ薬や、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を処方されることが多いと思います。

しかし、これらはパニック発作の症状を一時的に抑えるだけの効果しか期待できないと思います。

また、パニック発作の症状だけに目を向け、これを無くそうとして薬を飲むのは森田療法で言っている気分本位の「はからい」の行動になってしまうのです。

ですから、一時的には症状を抑えることが出来たとしても、長い目で見ると、ますます、症状を強くすることになってしまうと思います。

こういう意味で、パニック発作の症状を薬で治そうとするのは誤った方向の対応ということになると思います。


6.薬を用いない正しい対応

さきほども書きましたが、パニック発作の原因は、動悸や息苦しさのために、このまま死んでしまうのではないかという「死の恐怖」に対する「とらわれ」にあると言えるのです。

そして、この「死の恐怖」の背景には、バリバリと勉強や仕事をしたいとか、充実した生活を送りたいという生の欲望があるのです。

ですから、パニック発作の不安はそのままに、この本来の欲望を満たすために必要な行動を取っていく事が大切になってくるのです。

これを森田療法では目的本位の行動と言っていますが、このように目的本位に行動していく中で「死の恐怖」に対する「とらわれ」が薄れてくると、これに比例してパニック発作の症状が起こらなくなってくるものなのです。

ですから、これが薬を用いない最も良い対応方法になると言って良いと思います。

※なお、この症状に関連する情報については、公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団のHPで医療機関の医師などの解説が載っています。



トップへ   前ページ   次ページ


●もしこのパニック発作のページの内容が参考になりましたら、下のボタンから共有をお願い致します。

このエントリーをはてなブックマークに追加